50代のご夫婦がファイナンシャル・プランナーにお金に関する相談をする場合、子どもが独立した後の家計のやりくりや、老後の生活資金を確保する方法に関するものが中心になります。50代からはそれまでと違い、収入が減ったり無くなったりするタイミングも考慮に入れて、どのようなライフプランを立てていくべきかを考える必要があります。子供の手が離れて、出て行くお金は確実に減りますが、定年を迎えると収入も減っていくことから、使い方を誤ると、後々の生活に大きく影響を与えかねません。そのため、定年を迎える前の50代というタイミングでファイナンシャル・プランナーに相談することは重要な意味を持ちます。
ここでは50代のご夫婦のファイナンシャル・プランナーに対する相談例として、森田さん(仮名)ご夫婦からのご相談内容をご紹介しましょう。森田さんはご主人が57歳、奥様が55歳で、2人のお子さんはそれぞれ就職して別の場所で生活をしています。ご主人はサラリーマンとして、奥様はパートとして働いていますが、ご主人は3年後定年退職となるため、老後にはどれくらいの資金が必要となるか、その資金を今後どのように確保していったらよいかというご相談が中心です。また、老後の家計のやりくりをアドバイスしてほしいということから、家計診断を行いました。
まず、森田さんの場合、家計診断の結果、最も早く見直すべきものとしてご主人の生命保険の問題が出てきました。お子さんが小さかったころの保険をそのままの保障額で更新して月々保険料を払っていたため、月々の保険料が驚くほど高額になっています。死亡保険金の金額が現時点では必要のないほど高額だったことから、保険の契約内容の見直しと払い方の見直しをご提案しました。奥様と二人暮らしになった今、必要な保険金の額は奥様の生活を支えられる分だけでよいので、保険金の小さい保険に掛け替えるべきですが、ご主人の年齢で新しい保険に入ると保険金が小さいのに保険料が高くなってしまいます。ですから、損の無い形での見直しは、FPの腕の見せ所となります。
また、ご夫婦お2人で生活する生活費として、いくらくらい必要なのかという金額を、家計診断の結果を基にお話ししました。ファイナンシャル・プランナーはお金にまつわる話を中心に、どのような生活設計をできるか、どのようにしたら理想の生活を実現できるかについてご提案します。そのために現時点での無駄もチェックする必要があります。森田さんご夫婦の場合、食費と車の維持費に無駄が見られました。食費は2人で50,000円以上かかっていることから、もう少し節約して慣れておかないと、老後もっと苦しく感じられるようになるというお話をしました。また、車も通勤に使っているわけでなく、休みの日も車に乗らないことが多いのに、大型の8人乗りを維持しているのは、駐車場代もガソリン代もかかり、車検や保険も余分にかかることから無駄になっていることはわかっていただけたようです。
老後必要になる金額は3,000万円と一般的に言われています。ですから、まったく何もない所から、その金額を数年で確保しようとすると、かなり無理があると言えます。今回の相談者森田さんを初め、どの相談者さんも、ご自身でいろいろと考えて前もってかなり節約を試みてから相談に来られます。それでも、プロがアドバイスする節約内容はそれまでのものとかなり異なることが多いようですから、できれば定年ギリギリになってから相談するのではなく、もっと早い時期からきちんとお金のプロであるファイナンシャル・プランナーに相談するようにするとよいでしょう。